断熱・遮熱の知識
断熱・遮熱の理論を簡単にまとめました。
熱移動の基礎知識
熱の正体・熱移動の三要素
熱の移動には3つの方法があります。
また、高温→低温に熱移動します。
①伝導熱
一言で言うと固体内の熱の移動。
例えば画像のようにガラスを触って冷たく感じるのは手の熱がガラスに移動したため。

②対流熱
固体表面と流体(液体・気体)間の熱の移動。
エアコンで部屋の温度を調整できるのは対流熱の働きによるものです。
全体の空気が均一になるまで移動し続けます。

③輻射熱
離れた物体間の熱の移動で、その中間に媒体は必要ありません。
全ての物体が熱放射を行っており、その正体は電磁波です。
電磁波は他の物体に吸収されると再び熱となって物体の温度を上昇させます。
一番身近なものが太陽光になります。何もない宇宙空間を通って地表面などにあたり熱を発生させます。

建物の熱移動の75%は輻射熱
建物内を通過する熱移動は、かつて伝導熱と対流熱が殆どであると考えられてきました。
しかし、実際には殆どが輻射熱で、その量は全熱量の75%を占めると米国の多くの機関が報告しています。
下記グラフはそれぞれの方向の熱移動の割合を示したものです。
輻射熱の移動を阻止することが、省エネに最も有効な対策です。
断熱と遮熱の違いとは?
断熱とは
断熱とは熱を断つという意味があり、建築物においては「熱を伝わりにくくし、夏は涼しく、冬は暖かい」状態を作ることを指します。
一般的にグラスウールやポリスチレンフォーム等の断熱材を用いて、伝導熱の伝わるスピードを緩やかにする方法が採用されてきました。

遮熱とは
遮熱とは一般的に電磁波(太陽光等)を反射することで、温度上昇を防ぐことを指します。
遮熱材の種類はアルミシート、遮熱塗料等ありますが、アルミシートは電磁波を反射し、遮熱塗料は主に赤外線領域の波を反射する特性があります。
反射するという特徴から夏の暑さにしか効かないように思われていますが、実は間違いです。詳しくは後述します。

断熱と遮熱の違いまとめ
断熱は伝導熱の伝わるスピードを遅らせ、遮熱は輻射熱を反射するというのが一般的な理解です。
建物の熱移動の75%が輻射熱であることを考えれば遮熱によって熱移動を抑制することが省エネに最も効果的であると言えます。
また、輻射熱をカットするにはアルミシートのような遮熱材が最も有効であることは周知の事実です。
遮熱シートの理論と効果
ここでは遮熱シート(アルミシート)の理解を深めたいと思います。
高純度アルミニウムの特性
各種金属は表面の状態によりますが、一般的に高い反射率を持っています。
金、銀、銅、アルミニウム等が有名ですが、コスト面と性能のバランスで優れているのがアルミニウムです。
高純度のアルミニウムは98%の反射率を持っており、輻射熱をわずか2%程度しか透過させないため、宇宙産業などにも利用されています。
使い勝手の良さからアルミニウムは私たちの身近なものに広く利用されています。
・建築資材の表面コーティング
・機械類の反射板
・保冷バッグ
・消防服
反対に伝導熱は非常に伝えやすく、アルミ鍋として利用されるほどです。
ここで、反射を期待するために必ず必要な条件があります。
それは静止空気層。物体に触れていると伝導熱として伝わります。
非常に重要な要素ですので、覚えておいてください。
アルミシートの反射を期待するためには静止空気層が必ず必要!
また、アルミニウムは非常に腐食しやすい特徴も持っています。
よくアルミニウムはサビにくいと言われますが、正確にはサビたようには見えないだけです。
表面に酸化アルミニウムの薄い膜ができ、腐食に耐えています。
この酸化アルミニウムは酸性・アルカリ性の双方に弱く、破壊されると腐食がすすんでしまいます。
また異種金属に接触すると電位差により腐食してしまいます。
これらを克服した材料が少ない事も遮熱シートが普及しない理由の一つだと考えています。
遮熱シートは冬にも有効?
遮熱シートが輻射熱を反射するため、夏に有効であることは周知の事実です。
では冬に対してどうなのか?次の画像を見てください。

これは95℃のお湯が入ったヤカンの一部分に遮熱シートを張り付けたサーモグラフィ画像です。
真ん中の青く映っている部分が遮熱シートですが、その部分は28.2℃とほぼ空気温。つまり、高温に接していても反対側には熱をほとんど放出しないということです。
まとめますと、高反射と低放射の両方の機能があるため、夏と冬のどちらでも熱の移動を止めることが可能という事になります。
遮熱シートの選び方
遮熱シートを選ぶうえで重要な項目を説明いたします。
表面処理
アルミニウム製が主流ですが、酸化被膜だけでは弱く、非常にデリケートです。
酸に弱い、アルカリに弱い、水に弱い、金属との接触に弱い、高温多湿に弱いなど。
人口被膜が無い未処理の状態では使える所がほとんどありません。
現在流通しているアルミシートの大半は表面処理を行っていません。
これには重大な理由があり、被膜処理をすればするほど反射率が低下するためです。
先述しましたが、「反射には空気層が必要」という部分に関係しており、被膜があることで伝導熱で伝わるようになってしまうからです。
他社様で遮熱シートを使って断熱工事を行ったある工場では1年目しか効果が無かったとのことでした。
腐食が進むと反射率は30%程度まで低下しますので、効果は激減します。
反射率を維持したまま、表面処理を行っていることが重要。これが非常に難しい。
耐腐食性
前項の表面処理を行い、各種試験の結果を公表している材料が安心して使用できると考えます。
私がおすすめしている遮熱シート(日本遮熱のトップヒートバリア)は下記の試験を行い、全て良好な判定を得ています。
試験内容(目的) | 結果 |
---|---|
1.遠赤外線ヒーターの熱を反射するか | 熱くならないOK |
2.簡易腐食検査 | 白い布で擦ってみて黒くならないOK |
3.スキマ腐食(水に浸して1週間放置) | 腐食は見られないOK |
4.酸やアルカリ等耐薬品試験 | 変化なしOK |
5.電気テスターで通電テスト | 通電なし(電食防止)OK |
6.高温多湿の環境における腐食試験 | 変化なしOK |
7.水の浸透試験 | 小口からの水の浸透は見られないOK |
8.耐熱試験 | 220℃まで直張りOK |
9.結露試験:(公的試験) | 結露無しOK |
10.防水性試験:(公的試験) | 漏水無しOK |
11.不燃性能試験:(公的試験) | 不燃認定試験合格OK(不燃認定商品) |
12.屋外曝露試験:(公的試験) | 1年での反射率の低下1%未満OK |
13.顕微鏡による表面劣化調査:(公的試験) | ほとんど変わらずOK |
ここまでの試験を行い、結果を公表しているメーカーさんは少ないと思います。
それだけ自信がある材料に仕上がっています。
THB(トップヒートバリア)の効果
熱貫流抵抗試験(公的試験)において、THB-Xはわずか0.2mmの厚さで3.300㎡・K/Wの結果を得ています。
分かりやすく言うと、100㎜厚のスタイロフォームに相当する性能で、さらには蓄熱しないため、一般的な断熱材より大きな恩恵を得ることができます。
ただこれはアルミニウムが持っている特性です。
THB(トップヒートバリア)の何がすごいかといえば、何といっても保護膜のすごさ。
保護膜を作るということは空気層が無くなるということなので、アルミニウムの反射・放射の特性を普通であれば無くしてしまいます。
紫外線の当たる外部使用で10年、内部仕様では半永久の耐久性を有しています。
機能性と耐久性を両立させた事で性能は世界一と評価されています。
保護膜を大手企業が真似をしようとしたようですが、再現できなかったようです。
製造方法の特許申請はしておらず、他製品には無いものと思います。
他製品で気になるものがあればこれらの特徴を持っているかご確認してみてはいかがでしょうか?
正しく施工すればわずか0.2mm厚の遮熱シートで100㎜厚のスタイロフォームに相当する断熱効果が得られ、且つ長寿命!
効果一覧
遮熱シートにより得られる効果は下記のようなものがあります。
- 省エネルギー 冷暖房費40%~60%
- 熱中症対策 日陰効果で非常に効果的
- 室内作業の生産性 大幅改善
- 結露対策 ほぼ解決できます。
- 精密機械の精度保持 原因である輻射熱をカット
- 生鮮食料品の鮮度保持 大幅に向上
- 熱の発生する設備への対策 大幅改善
- エアコンの長寿命化 稼働を下げる事で負荷が下がります。
遮断熱工事の種類と比較
断熱工事、遮熱工事の種類と比較を以下に示します。
現場状況により施工内容が変わりますが、一般的な内容にて比較いたします。
比較表

断熱効果
耐久性
材料費
施工性(施工費)
総合評価
総合評価はダントツの1位。
今までの説明で断熱性能、耐久性とも申し分なし。
材料費も断熱材より安く、施工性もよい。
性能・コストともに最高ランク。

断熱効果
耐久性
材料費
施工性(施工費)
総合評価
総合評価は3位。
一般的に行われる断熱工事であるため、それなりに効果はあるが、蓄熱した熱を放出するので効果は限定的。
材料・施工費も余分なものが必要で高くなる。
基本的には弊社では使用しない。

断熱効果
耐久性
材料費
施工性(施工費)
総合評価
総合評価は2位。
塗料で発揮できる反射及び断熱性能は金属には到底及ばない。
塗装工事は建材の保護のために必要な工事。
遮熱・断熱の機能はおまけ程度に考えた方が良い。
工法比較のまとめ
遮熱シートでの断熱工事が工期も短く、有利になります。
直近の予算が無く、塗装工事は更新時期という場合は遮熱塗料・断熱塗料で塗装を行うという選択肢もありますが、効果は限定的です。
断熱材での断熱工事はよほどの理由が無い限り弊社では行いません。
遮熱シートが普及しない理由は?
ここまで読み進めて頂ければ遮熱シートの良さはご理解頂けたものと思います。
ではなぜ普及しないのか?
その理由を解説していきたいと思います。
知名度の低さ
アルミシートを用いて簡単に断熱工事ができ、しかも効果が高いという事があまり知られていません。
これは後述する法の壁による影響が大きいと思われます。
従いまして、小規模でお試し頂き、効果が実感できれば本工事に移行するという流れが大半です。
エアコンの負荷が高い工場様などでは実は導入がかなり進んで来ています。
わざわざ効果がある事をライバル会社には情報提供しないでしょうから口コミで広がる事もありません。
早く気が付いた方から有利な環境作りを進めているというのが現状かと思います。
法の壁
これがアルミシートが普及しない最も大きな理由かと思われます。
建築基準法等の法律では断熱に対する評価が熱還流率(つまり伝導熱評価)であるため、遮熱材は輻射熱をカットするものなので、評価基準が異なり同じ土俵に上がれません。
設計士さんはアルミシートに効果がある事は知っていますが、新築工事には使いにくいという現状があります。
省エネ法により定められた省エネ基準の断熱性能の評価、いわゆる断熱等級なども基本的に熱貫流率での基準になります。
2025年度以降は全ての新築住宅に等級4以上が義務化されるため、グラスウール等の断熱材を使わざるを得ないのです。
遮熱材を同じ土俵に上げるにはクリアしないといけない壁がいくつもあり、まだまだ時間を要すると思われます。
ただし、新築工事には断熱材と評価されないだけで、使えないわけではありません。
補助金が使えない
断熱工事に対する補助金・助成金が各種用意されていますが、断熱工事の対象となる材料はグラスウールなどの断熱材です。
遮熱シートは含まれていません。
国が一緒になって断熱材を勧めているのです。税金を使って。
トップヒートバリアは特許庁などから表彰されているにも関わらず対象工事とはなっていません。
不思議ですが、これが現実です。
補助金が出るなら断熱工事をしようかな?と考える方も多いかと思いますが、実は補助金を考慮しても遮熱シートでの工事の方が安く施工できます。
粗悪品が多い
現在、アルミシートはホームセンター等でも販売されており、保冷バッグなどにも利用されています。
それらはコスト面から蒸着という製造方法によって作られた品質としては低いものがほとんどです。
「効果はあるけど、そこまでではない」と感じていませんか?
表面処理をしていないものは1年程度しか効果は無く、表面処理をしているものは効果そのものが低い。
さらには使い方が間違っているので効果が発揮できないケースも多々あります。
トップヒートバリアのような表面処理を行っており、アルミシートも蒸着ではなくシートを使っている高品質な材料はほとんど無いと思われます。
法整備が整っておらず、さらに品質の規格が定まっていない状況ですので、設計士さんはアルミシートを指定した設計ができるわけありません。
胡散臭い
「とにかく胡散臭い」
これが私がこの製品に出会った時に最初に感じた率直な感想です。
材料が安く、施工性も良く、断熱効果・耐久性も高い?
そんな都合のいいものがあるわけないと。
そこで、自分で試し、効果を検証しました。
1.冬に足元に敷いてどうか? →その周りだけ暖かく。
2.事務所の天井に入れてみたら? →エアコンが良く効くように。
3.食品工場の結露がひどい箇所に張ってみたら? →ピタッと止まり。
4.築50年を過ぎている実家の離れに入れてみたら? →エアコンが劇的に効くように。
全てで十分な結果を得ることができ、今では自信をもっておすすめできます。
効果をご理解頂くには、とにかく体験して頂く他無いと考えています。
普及しない理由まとめ
以上のように、知名度の低さ、法の壁、粗悪品の多さ、胡散臭さ等が原因で遮熱シートを用いた断熱工事が普及していないと思われます。
効果に気付いた企業様等は積極的に取り入れています。
あれはできないか?これは?等、いろいろとアイデアが出てきます。
使い方さえ間違えなければ効果は必ず出ますので、お気軽にご相談下さい。
遮熱シートの可能性
遮熱シートの特性を理解すれば、暑さ、寒さに関する事であれば大抵のことは解決できます。
遮熱シートの可能性は無限大です。
こんな場面で使えない?などお気軽にご相談下さい。
